タイプ

イチジクは雌性両性異株(機能的雌雄異株)の植物であり、雄花の発生の有無に基づいて、雄花が発生するカプリ種と雄花が発生しないフィッグ種とに分類される。雌花はすべてのイチジクにあり、短形花と長形花があるが、そのうち短花型のイチジクはカプリ種に属する。対して、長柄の花をつけるイチジクはすべてフィッグ種に属する。つまり、イチジクの祖先と推定される雌雄同体のカプリ種には雄花と雌花(短花柱花)が存在するが、フィッグ種には雌花(長花柱花)のみ存在する。

フィッグ種のイチジクはコモン種(普通種)、サンペドロ種、およびスミルナ種と3種類の生態型に分類されており、これらフィッグ種は好条件下で食用の果実(実際は果実ではない)に成長する。つまり、イチジクはすべてコモン種、サンペドロ種、スミルナ種、およびカプリ種のいずれかの生態型種に分類されることになる。コモン種は夏果および秋果ともに受粉が不要な単為結果(実際は果実ではないため結果ではない)をし、サンペドロ種は夏果のみ単為結果し、スミルナ種は夏果および秋果とも単為結果しない。サンペドロ種の秋果および、スミルナ種の夏果・秋果は、カプリ種の花粉により受粉させないと実をつけることがない。

イチジク属植物はイチジク状花序(隠頭花序)と呼ばれる花嚢の内壁に小さい花をたくさん咲かせるが、外からそれを見ることはできない。 また、 花嚢はほぼ閉鎖状態であり、先端部にある小さな開口部もたくさんの鱗片に覆われているため、 花粉が自然に花嚢を出入りすることはできない。そこで、イチジク属植物はイチジクコバチの力を借りて花粉を運ぶという特殊な受粉システムを発達させた。この受粉システムは、イチジクコバチにも利益を与えている。花粉運搬の一方、イチジクコバチは花嚢に産卵し、幼虫は子房の一部を食べて育つ。両者の間には、子孫を残すという共通利益のもとで、 切っても切れない相利共生関係が築かれたのである。


コモン種

ほとんどのイチジク栽培者は、コモン種を育てることになる。コモン種は受粉を必要とせず単為結果するため、イチジクコバチが生息しない日本でも実を収穫することができる。コモン種は毎年1~2回、暖かい気候では3回収穫することができ、日本の気候では夏果・秋果と計2回収穫でき、夏果・秋果ともに、受粉が不要となる。イチジクの種類によっては夏果をつけにくい(実が落ちやすい)が、一般的に流通しているコモン種は少なくとも秋果を収穫できる。

果実中の子実は子房の残骸であって、胚は含まない。しかし受粉すれば趣旨を生じ、果実も大きくなり外観・品質にも影響を及ぼす。

サンペドロ種

サンペドロ種のイチジクは、コモン種と後述のスミルナ種のハイブリッド型と考えることができる。実際、サンペドロ種の一番果(夏果)は収穫量に差はあるものの多かれ少なかれコモン種のように単為結果するが、二番果(秋果)はスミルナ種のように、雌花が受粉しないと落果する。ただし、秋果が単為結果性は固定した性質ではないので、特定の品種を含めるか、他の品種を除外するかが問題になる場合がある。その厄介な性質の例はキングで、秋果を受粉させなかった場合、リバーサイドではほとんどすべての秋果を落とすが、沿岸部ではかなりの割合で成熟する。キングの秋果の成熟については日本でも報告されている(詳しくはキングを参照)。また、Drap d’Orもサンペドロ種に含まれているが、リバーサイドでは少数の秋果が受粉なしに成熟する。

日本ではキングビオレドーフィンはサンペドロ種にあたる。

スミルナ種

これまで挙げたコモン種やサンペドロ種とは異なり、スミルナ種を成熟させるには受粉させる必要があり、自然界ではイチジクコバチによってのみ受粉させることができるとされている。イチジクコバチは日本国内では生息しておらず、米国においてもカリフォルニアの特定の地域にしか生息していないので、ほとんどのイチジクファンはスミルナ種を手に入れようとせず、コモン種やサンペドロ種のイチジク品種のみを集収の対象にしている。

対して、イチジクコバチの自生地である南ヨーロッパを含む地中海沿岸エリア(小アジア、北アフリカ、ギリシャ、トルコ、ポルトガル等)では古くからスミルナ種が栽培されており、これらの国々で品種が選抜され、栽培されるようになった。なお、日本で販売されているトルコ産のドライイチジクはスミルナ種である。

なお、24-D、245-T、PCPAのようなホルモン剤の使用により、単為結果が実験的に確認されたが、実際にそこまでして収穫をする例はあまり見られない。また、キングが受粉なしに秋果を実らすこともあるように、スミルナ種においても品種によっては夏果を受粉無しで実らすこともあるようである。

カプリ種

カプリ種のイチジクは、雌花を受粉させるのに必要な花粉を作る雄のイチジクともいえる。カプリ種は小アジア、又はアラビア南部に原生し、今日の栽培品種の原生種に最も近縁で、栽培品種の祖先だとみなされている品種である。

イチジクコバチの幼虫にとって、カプリ種の内部が唯一の発育場所である。カプリ種の果実はイチジクコバチがいることと雄花が多い為に食用には適さない。カプリ種は通常、年に3回果実を収穫できるが、実の成熟のためには受粉が必要である。しかし第3果においては品種によっては受粉無しで成熟するものもある。しかし、基本的にイチジクコバチがいない地域では存在意義がないため、カプリ種の導入は通常は必要ない。

なお、スミルナ種とカプリ種の交配によって、新しくできる実生の品種のほとんどスミルナ種かカプリ種となるため、ドライイチジクの種を蒔いてもほとんどがスミルナ種かカプリ種となる。しかし稀にコモン種やサンペドロ種も発生し、実際に世界で流通しているコモン種やサンペドロ種については長年に渡って交配された品種から選抜されたものになる。