シノニム

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一般的に「シノニム」(英語: synonym)とは同義語、類似語といった意味を持ちます。生物・植物の命名法におけるシノニムは、同一と見なされる品種に複数の名前がつけられた場合にそれぞれをいい、 同種異名、異名、同物異名とも呼ばれます。

イチジクにおいては狭義には同一と見なされる品種どうしをシノニムというほか、広義には遺伝子検査で近縁関係にあるもの(完全に同一であると断定できていない)ものや、外見や特徴のみで似ていると判断されたものもシノニムと言われることがある。

シノニムの背景

たとえばリンゴやミカン、ブドウ、ブルーベリーといったイチジク以外の果物の多くは、品種登録(特許を取得)されている、あるいは現在は期限切れであっても過去、登録されていた。品種が登録されているということは誰かがその品種を品種改良をしたということで、時間をかけて交配・特性を評価した結果、その品種を品種登録するにいたり、その際に好きな名前をつけて独占権を持つことができる。

対してイチジクの世界では特許はほとんど存在しない。また、一般的にイチジクの品種は誰も権利を持っておらず、ごく少数の例外ではあるが時間をかけて品種改良し特許を取ったものが存在する。そのせいもあって、イチジクの品種名は誰もが自由につけることができるのが現状で、ほとんど同じイチジクに膨大な数の同義語や名前がついてしまっている。例えばハーディ・シカゴは、ほとんど同じような品種に100以上もの名前がついている。

シノニムの種類

同タイプ異名 homotypic synonym

同タイプの品種に対し新たな名前が再命名されることにより生じる。この場合、同じ物に対する複数の名前であることは異論の余地はない。

  • 言語間における表記のゆれ (例:Col de Dame BlancとLady White、等)
    • 言語間における表記のゆれに加えて読みかたのミスも付随 (例:Ronde de Bordeauxとロンドボーテックス、等)
  • 既に存在する品種に独自の異名をつける (例:桝井ドーフィン、ロードス、等)
    • 日本への導入時や流通時に誤った名前で広げてしまう (例:ブルンスウィック、等)
  • 商標登録などの関係で異名をつける (例:ドカロン、バナーネ、等)

なお、本来はシノニムどうしは同じ品種のはずであるが、日本国内では意図的に別名をつける等、そもそも品種の扱いがな業者や農家もいるため、例えば上記の例で言うところの「ロンドボーテックス」がRonde de Bordeauxと同一なのかは不確かである。そのため、「ロンドボーテックス」等の異名で購入した場合は勝手にRonde de Bordeauxと呼び名を買えずに「ロンドボーテックス」という名で取引することが望ましい。

異タイプ異名 heterotypic synonym

元々異なるタイプの品種として別々に命名された名前が、結果、同種類と判断され生じるシノニム。ただし、同種であるという判断が人によって異なる場合もある。

  • 別種と判断し記載した種が、見直しで同種と見なされた
  • 種内変異を亜種や変種と判断し記載したが分ける必要なしと判断された

同時多発シノニム superfluous synonyms

同時に複数の名前が与えられたことにより生じる。特に古い品種で発生する。

むやみにシノニムを増やさないために

概ね、以下のようなルールを守ればシノニムが増えることはない(逆に、守れていなかった・無頓着であったからこそ増えることになった)。簡潔に言うと、名前をつけようとしているイチジクに独自性があるかどうかである。

種を植えて育てた場合

実生苗の場合、それは親とも独立した性質を持つため、新しい名前をつけても問題ない。さらに、自身で人工受粉させて作った品種(種)であれば、その品種が自分の知的財産であることを証明できる可能性もある。

ただし、日本では花粉を採集するのに必要なカプリ種が手に入りにくく、イチジクを人工受粉させることは難しいので、選択肢になることはないだろう。

野生で苗木を見つけた場合

人の手が加えられていない野生の苗木を見つけたときも、それに好きな名前をつけてもかまわない。なぜなら、人工受粉させて作った種を自ら蒔くのと、自然に受粉したできた種が発芽した場合いずれにおいても、遺伝的に他のどの品種とも異なっているからである。しかし、人為的に移植されたクローンである可能性もあるため、その木が本当に実生かどうか、より多くの意見を聞くために写真を撮るのが望ましい。

ただし、日本では花粉を採集するのに必要なカプリ種が手に入りにくく、また自然に受粉させるためのイチジクコバチも存在しないため、野生の実生苗は存在しないと考える。そのため、こちらも選択肢になることはないだろう。

植えられた木を見つけたら

まずその木の持ち主から、その木がどこから来たのか確認すること。ナーセリー(業者・農家)から来た苗木なのか、どの国から来た苗木なのか。

ナーセリーから来たものであれば、その品種を特定し(難しいことではありません)、ナーセリーが付けた元の名前を記録しておきます。もし、その苗木がナーセリーから来たものでないオリジナルの品種(実生苗など)であると特定できたなら、新しい名前を慎重につけるべきでしょう。