剪定・樹形

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Ross Raddi氏のブログの翻訳です。

イチジクの剪定ガイド by Ross Raddi

イチジクを上手に育てるには、適切な剪定をすることが大切です。これは、どんな果樹にも当てはまります。光合成を最大限に生かすことができれば、より良い品質の果実を収穫することができるのです。

このブログ記事では、イチジクの木の剪定技術を向上させたいと考えています。木には個体差があるので、様々な状況を見ていきたいと思います。また、目標も人それぞれです。目標を確立することは、剪定する前に誰もが自分に問いかけるべきことです。意図して切ったかどうかを確認するのです。樹形を良くしたいのか?より多くの実をつけたいのか?より健康な木にしたいのか?夏果を作るための剪定なのか?これらはすべて自分自身に問うべき質問であり、どの質問をするかによって、アプローチが劇的に変わるのです。

最近、私はこのテーマについて長いビデオを公開しました。ビデオでは以下の私の言葉とは異なる視点から解説していますので見る価値アリです。ぜひご覧ください。

剪定は、樹木に何を求めるかによって、樹高のコントロール、木の健康、生産性と樹形など、いくつかのカテゴリーに分類することができます。

① 木の健康

まずは木の健康状態からお話しします。なぜなら私たち人間と同じように、健康は宝であるからです。木が健康でなければ、本来のパフォーマンスを発揮することはできませんし、木の健康状態を改善するのを待てば待つほど、より良い果実を得る機会を失うことになります。ゆっくりではなく、早く包帯を剥がした方がいいということですね。イチジクの木の健康について話すとき、主にイチジクモザイクウイルス(FMV)が常に問題となります。もちろん、傷んだ枝や枯れた枝はもちろん、病気になっている枝も取り除きたいのです。FMVは、圧倒的多数のイチジクの木に存在し、重い症状から非常に軽い症状、あるいは全く気づかない症状まで、様々な形で現れます。通常、FMVは心配するほどの問題にはならず、やがて木はウイルスを克服します。私の考えでは、ウイルスがある程度の強さ(かなり曖昧ですが)になると、その品種が本来持っている力を発揮することができず、木はそれを克服することができなくなります。その木は、遺伝子が示すその品種の能力を発揮することができないのです。幸いなことに、ウイルスの強さは弱めることができ、育成の初期段階ほどその症状は顕著となることが多いです。初期段階で修正することができますし、そうすべきです。

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イチジクの木は、芽によってFMVのレベルが異なるということがわかりました。そのせいもあって、同じ母樹から発根させた挿し木でも苗の生育が異なることがよくあるのです。どんな品種でも100本挿し木をすれば、本来全く同じ形質を示すはずなのに、母樹と同じようにはならない現象がかなりの確率で起きるのです。この不健康な芽を取り除くことで問題は解決するのですが、大抵の場合、樹木には弱い部分があります。これは、不健康な芽が成長し、感染の激しい部分を取り除く剪定をしなかったために、木がそれを克服しようとしている最中の枝か、あるいはなんとか克服したが、後になって感染のストレスが症状となって現れている枝です。慣れてくれば健康でない枝を見分けることができるようになります。通常、そのような症状は古い枝、多くの人にとって、それは主幹、主幹の一つ、主枝の一つなのです。この弱点を直すには、若返り剪定と呼ばれる技法が重要です。この技法とその歴史については、こちらでお話しています(→https://www.figboss.com/post/rejuvenation-pruning-a-technique-we-should-do-more-of)

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若返り剪定とは、簡単に言うと、感染のひどい枝を取り除き、その代わりに新しく健康な芽を出すように促す方法です。イチジクの木を強剪定することで、頂芽優勢によって木の低い位置から新しく健康な芽を出し、非常に健康で元気な生育をするように促します。これは、冬でも夏でも行うことができます。伝統的に、この技術は非常に古い木に対して行われてきました。土の下まで木を切り戻し、土を少し掘って、根から不定芽が形成され成長するのを促すのです。この芽が伸びてくると、その木がFMVに感染していることに気づかないほど健康に生育します。健康で勢いのある新芽を1本、または数本選び、それを新しい主幹とします。この時点で、その木には良い土台ができ、その品種が本来持っているパフォーマンスを発揮することができるのです。私は一年生の挿木苗にもこの方法を使います。最初の生育期を過ぎると、通常は強剪定できるほど根が張っています。このように、初期に弱く不健康な成長を犠牲にすることで、後にその対価が得られるのです。

② 樹形

樹形を考える場合、なるべく手間をかけずに完成させることが大切です。まず、最初の画像のStandardの樹形、Bushの樹形(※後の文章を読む限り画像のものよりさらに地際で摘心している樹形を指しているものと思われます)にするのか考えてください。寒冷地では、地上部は通常、保温材で包んだり保護したりするのが難しいため、維持するのが非常に困難です。ゾーン7以上の温暖な地域で、適切な品種であれば、特別な保護無しでも成功します。イチジクの木は、自然にBushのような樹形になりたがるので、そのような道を選ぶと、自然に幾つも枝を出そうとする木の衝動と戦うことになることを承知しておいてください。適度な明るさがあれば、どちらの形でもデメリットはないと思いますが、防寒が必要な寒冷地では、Standardの樹形にするのはデメリットとなります。Standardの樹形の場合、主枝が高いところにあるので、大きさは単純に背丈が高くなります。希望の高さになったら摘心して半永久的な主枝を形成する必要がありますが、ブッシュ形態では地表付近の高さに主枝を形成します。イチジクは、Cordonで育成することもできます。これは、光合成を最大化する最も簡単で最良の方法の一つであり、イチジクの樹形や剪定を考える際に最も重要なことだからです。どのような樹形が木に届く日光を最大にするのでしょうか?

Tree Type ©Chris Bowers & Sons

 

ⅰ. Cordon(コルドン)

通常、1〜3本の主枝を低い高さで生やします。後述する方法ⅱと同様に、1年目は単幹として育て、夏に希望の高さで摘心します。こうすることで主枝の形成が促されますが、希望する主枝の長さによっては、支線(ワイヤー)やフェンスに縛り付ける前に、希望する長さになるまで待った方が良いでしょう。2~3年目に主枝をワイヤーやフェンスに縛った後、主枝の摘心をすることをお勧めします。そうすることで、主枝に沿って新しい垂直方向の芽が形成されるようになります。最も一般的な方法は、毎シーズンその垂直方向の新芽を2〜3芽残して切り戻すことです。または、結果母枝となっている主枝から2.5~10cmほどの長さまで切り戻し、翌年の生育のために十分な芽をその枝に残します。垂直方向の芽は、およそ20〜70cmの間隔をあけてください。これは、花芽を出すのに必要な日光を確保するために重要です。私はこの方法をすべての人に勧めているわけではありません。確かに剪定を学ぶ上でとても良い経験になりますが、毎年大きく剪定しなければならないので、大きなデメリットがあります。Cordonは樹高維持には最適で美しい樹形です。果実のサイズは大きくなりますが、湿度の高い場所では果実の品質が落ちます。この形は、非常に経験豊富な栽培者、商業栽培者、またはスペースを節約したい栽培者に向いています。コンテナ栽培にはお勧めできません。

ⅱ. Bush

これはとてもシンプルです。根元からの結果母枝が多くなりすぎることがよくあることに気を付けてください。これらは樹木の永久的な土台となるため、結果母枝が多すぎると樹冠がどうしても密になり、結実が悪くなってしまいます。コンテナの場合は、鉢の大きさにもよりますが、2~4本の結果母枝をお勧めします。地植えの場合は、4~6本程度を目安にするとよいでしょう。私の圃場のように、イチジクを1~1.5メートルの間隔で密植する場合は、4本以下が適当です。それぞれの結果母枝は、希望する高さで摘心し、より多くの枝を形成し、樹高を決定することができます。

一般的な樹形の形成方法

ここでは、一般的な樹形の2つの形成方法を紹介します。

Tree Type ©Ross Raddi

 

  • 方法その1
    • 挿し木から1年目: イチジクの挿し木は根を張り、成長期の全期間、一本の枝として伸びていきます。その年の冬に、希望の高さまで切り戻します。
    • 2年目: 休眠から覚め、3〜5本の永久主枝が形成される。
    • 3年目: 果実の着果が盛んになる。

右の上の写真は、2年目の生育期を終えた木です。1年目は単茎で成長し、冬に希望する高さに剪定しました。5つの主枝を作り、光合成を最大化させるために支柱に誘引しました。

Tree Type ©Ross Raddi

 

  • 方法その2
    • 挿し木から1年目: 挿し木したイチジクの木が根を張り、単茎やブッシュとして伸びています。夏の間、枝が力強く成長し、大きく適切な大きさの葉が形成されたら、それらの特定の枝を摘心します。摘心の後も主枝の形成を促すため水やりを続け、肥料を与えます。その際、来年側枝が伸びるスペースをつくるために、主枝を傾けることが適切な場合もあります。摘心の後、果実をたくさんつけると、期待されるような生長は望めません。摘心後に果実を取り除き、樹が成長し続けるためのエネルギーが余るようにする必要があるかも知れません。
    • 2年目: 1年目にすでに2〜5本の永久的な主枝が形成されています。冬の剪定は、あったとしてもごくわずか。この主枝は支柱に固定します。この頃には果実の着生が盛んになっています。

右の下の写真は、夏に摘心し、最初の生育期を終えたばかりの木です。5つの主枝が形成されました。そのうち3本は強く成長し、2本は優勢でないため成長しませんでした。支柱への固定はまだ行っていませんが、強い成長を見せた3本は、来シーズン、他の2本の主枝がある程度優勢になるように、そして光合成を最大にするために、互いに離して支柱に誘引し、およそ30度の角度に曲げる予定です。

③ 生産性

Tree Type ©Ross Raddi

 

最大限の生産量を得るための剪定は、実際に剪定をしないことに尽きます。または、最小限の剪定をすることです。しかし、まずは樹木が健康であること、そして正しい樹形であることを確認する必要があります。望ましい形になれば、生産に集中することができます。そのため、剪定の他の目的について最初に説明しました。生産量を上げるには、光合成を最大にすることが基本ですが(これは樹形の項目でかなり詳しく説明しています)、木についた芽そのものも重要な要素です。イチジクの木の芽は、それぞれホルモン成分、炭水化物、そしてFMVの含有量が異なります。ホルモン成分は、はっきりと見ることができます。根元から出たサッカーは、ホルモンのバランスが崩れているため、結実するのに非常に苦労します。この芽は栄養成長が旺盛で、1シーズンでも土の高さから300~450cmにも達することがあります。頂芽(APICAL BUD)は、その逆の成長をします。頂芽の成長は遅く、結実は旺盛で、頂芽の果実は簡単に早く形成されます。同じようなことが、頂芽のすぐ下にある側芽(LATERAL BUD)についても言えます。頂芽に比べ、貯蔵されている炭水化物は少ないですが、ホルモンのバランスは保たれています。冬に頂芽だけでなく側芽もすべて剪定してしまうと、翌年の結実はかなり難しくなります。なぜなら、その枝に残っているのは、いわゆる栄養芽(VEGETATIVE BUD)だけだからです。もちろん、日当たりの良い場所や適切な品種であれば、これらの栄養芽から望ましい結実が得られる可能性はありますが、頂芽と側芽の下にある栄養芽は、翌年に実をつけるのがより難しくなります。繰り返しますが、そのホルモンと炭水化物の成分が重要なのです。炭水化物が多いほど、翌シーズンの生育が旺盛になり、果実も早くなる。これは、果実の品質にも関係しています。ホルモンバランスが良い芽ほど、結実しやすくなります。たとえ日射量が少ない条件でもです。

何でもそうですが、1か0かだけではありません。ニュアンスの違いもありますが、一般論として、栄養芽やサッカーだけの生育の場合は、剪定を多くすると実が少なくなります。

生産者の中には、強剪定をすると翌年の生育が良くなり、その結果、実が多くなると主張する人がいるかもしれません。理論的には理にかなっています。翌年の葉が多ければ多いほど、秋果をたくさん収穫できる可能性があるからです。彼らの考え方は、樹木のホルモンを変化させることに基づいています。私たち生産者は、剪定によって植物のホルモンを変化させることができます。イチジクだけでなく、他の植物も同じです。冬の剪定は翌年の成長を促しますが、夏の剪定は逆の効果になります。成長は大人しくなりますが、結実を促す方向にホルモンが傾くのです。

冬の強剪定の考え方はあまり正確とは言えません。なぜなら、冬剪定で翌シーズンの生育が旺盛になることによって得られる恩恵は、夏に単に成長する先端部や頂芽を取り除くだけで達成できるからです。(強剪定によって)頂芽と側芽をすべて取り除く必要はないのです。また、品種によっては強剪定をした結果、成長する栄養芽は枝が伸長する割には、その品種(またはその品種の中の特定の木)があまり結実しないという現象が起こります。

このような理由から、Cordonは有効ですが、一般的なイチジク栽培者にはお勧めできません。同じことが、毎年冬に樹高90~120cmに切り戻し、その後再成長させる場合にも言えます。多くの生産者がこれらの方法を選択するのは、木の大きさをコントロールするのに最適な方法だからだと思います。また、剪定のアプローチとしては単純な方法ですが、大半の状況においてこれらの方法は劣っています。一石二鳥の方法があります。このブログ記事の最後のセクションでは、樹木の大きさをコントロールしながら、頂芽と側芽をたくさん残す方法をご紹介します。

④ 樹高維持と夏果生産

このセクションでは、古い枝を若い枝でリフレッシュすることについて説明します。イチジクの木の大きさをコントロールするためには、結果母枝をリフレッシュする必要があります。最も高く、最も密度の高い主枝を取り除き、最終的に取り除いた結果母枝の代わりになる若い枝があることを確認します。結果母枝とは、木の主幹から出る永久的な、あるいはこの場合は半永久的な枝のことです。ブッシュの場合は、結果母枝は根元から出る幹です。ですから、サイズをコントロールするための剪定は、樹木の上部ではなく、樹木の内側のかなり低い位置に集中させます。このリフレッシュを実現するためには、結果母枝を完全に取り除くことが一番です。先程強剪定をするのは収穫を減らしてしまうためあまりお勧めできないと述べましたが、しかし、もし大きさを調節する必要があるのなら、これは必要なことであり、健康なイチジクの木を長持ちさせることに繋がるのです。このリフレッシュや再生のプロセスは、健康に影響を与えるだけでなく(若返り剪定の一種であるため)、ホルモンにも影響を与え、ある程度の樹齢を重ねた木には大きな恩恵をもたらします。

夏果の生産という点では、古い枝を新しい枝にリフレッシュすることも必要ですが、結果母枝は残ります。永続的な構造が必要なのです。代わりにリフレッシュされるのは、その結果母枝や主枝についた結果枝です。2~3年目の枝を毎年取り除くことで、大きな実をつけると同時に、サイズをコントロールし、樹勢と健康を継続的に更新するという望ましい成功が得られるでしょう。

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このブログの記事から、何か学んでいただけたでしょうか?イチジクの木の夏の剪定に関する以前のブログ記事はこちらです