若返り剪定

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Ross Raddi氏のブログの翻訳です。

若返り剪定(Rejuvenation pruning)について by Ross Raddi

若返り剪定(Rejuvenation pruning)とは、M.Pons氏が著書の中で触れている剪定技術です。特に地植えの老木について述べていますが、鉢植えや若木に適用できないとは思えません。実際、この方法は発根した翌年にする剪定としてスタンダードなものになるべきだと思います。例えば、2019年の1月に挿し木をしたとします。ほぼ1年後の休眠期に、このテクニックを実行するのです。ただし、このような若木を扱う場合は、ある程度慎重な判断が必要です。

[以下、M.Pons氏の著書「バレアレス島におけるイチジク(The fig trees of the Balearic Island)」内の「若返り剪定(Rejuvenation pruning)」についての記述の抜粋]

イチジクの木が衰え、老木になり、収益性の閾値より劣るレベルにしかならないときに、その木の植生と生産性を回復させることを目的としています。

イチジクの木は、通常樹齢30年以降に老化のプロセスに入ります。地中海性気候の地域においてはこの木の平均寿命は100年以上ですが、樹齢30年頃からが樹勢回復のための剪定を開始するのに適した時期です。

最も一般的な方法は、老木になったイチジクの主幹を地際もしくは地下まで切り戻し、主幹の周りの土を20〜40cmほど掘り起こして根を露出させ、その上に新しい土をかぶせるというものです。すると、短期間で新芽が勢いよく出てきます。一番良い新芽を残せば、すぐに新しく樹体を形成します。

また、樹勢回復の方法として、クラウニング(樹冠の密度を下げるために弱い枝や内向きの枝を間引くこと)、強剪定、Afrailado(樹木に求める樹勢に応じて、さまざまな高さで幹を切り戻すこと)という方法があります。

[抜粋終わり]

[以下、AscPeteの記述の抜粋]

数年後に主幹に戻るように剪定してやり直すか、大きな枝から取り木をしてやり直せば、樹形を新しくすることができます。また、この剪定方法のもう一つの利点は、結果枝を取り木や、挿し木または接木用の穂木として簡単に利用できる点です。 また、主幹の近くにある結果枝を残して主枝・結果母枝を取り除き、残した結果枝を新しい主枝・結果母枝として養成して枝の更新を行う方法を示している文献もあります。また、木が成長して樹勢が強くなると、利用可能な栄養分と実際の新梢の量によっては、その後、節間が実際に狭くなります。

[抜粋終わり]

以下、私の感想と経験です。

数年前、AscPeteがこの若返り剪定について最初に投稿し始めたとき、私はかなり懐疑的でした。しかし、この方法は、成長が止まっている木や、FMV濃度が高い木、生産性の低い木には非常に有効です。さまざまな問題に対応できるのです。私は、この方法が、品種の特性を遺憾無く発揮させるための万能薬だと考えています。かなり極端な話ですね。イチジクに効く万能薬?(笑)

ご存知のように、イチジクの木は根元まで枯れると、非常に勢いよく、以前よりもずっと健康な状態で再成長します。その好例が、Herman2のイスキアブラック(UCD)です。この品種はFMVがひどいことで有名でしたが、Herman2の木が寒さで地際まで枯れた後、見事に復活しました(ある意味若返りの剪定の一種と言えます)。翌年には再び萌芽し、より健康な状態になりました。現在、流通しているイスキアブラック(UCD)のほとんどは、Herman2の木に由来します。さらに、「なぜ、特定の木だけうまくいかないのか」という疑問は、いつも私たちを悩ませます。同じ品種を10本持っていても、1本か2本が他の品種に比べてひどく劣ることがあるのです。もし、すべての木が健康で元気な幹をベースにして正しいスタートを切れば、その木が本来持っているパフォーマンスを発揮する最高の機会が得られるというのは合理的な推測だと思います。そうすれば、長い目で見れば時間の節約にもなりますし、品種特性の観察もより正確になります。例えば、私の自根のHative d'Argentileもこの若返り剪定をすればもっと良いパフォーマンスを発揮すると確信しています。もしかしたら、木の健康状態の悪化が止まったり、ゆっくり持ち直したりするかもしれませんよ?もしかしたら、「○○だから」という理由で特定の品種をリストラする必要がなくなるかも?

3年目に入ったPlaneraの鉢植えに若返り剪定をしました。3年間、ほとんど成長せず、実の量も驚くほど少なかったのです。他の人にPlaneraの様子を聞くと、私とは正反対でした。6月に根元まで切り詰めた後、新たに元気なシュートを出して再出発しました。この品種では見たことのない成長と元気な葉を見ることができました。これからはPlaneraの本来の姿になると信じています。

私の考えでは、この方法は完全にやり直すよりも断然良いと思います。多くの人が木をあきらめます。ポットで育てるには大きくなりすぎたり、うまく育たなかったり、理由は様々です。すでに多くの人が取り木をして再出発して、また果実を収穫できるまでに長い時間を要したり、親木からFMVを受け継いで上手く成長しなかったりというような経験をしてきていると思います。それはまさに「1からやり直し」になります。状況によってはやり直しも必要かもしれませんが、切り戻すことによって健康を取り戻すことができれば、より良い結果が得られるのではないでしょうか。