秋挿し・冬挿し

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いちじくの挿し木は、一般的に芽吹く前の2~3月に屋外で行われます。それより早い時期の挿し木は、寒さのダメージなどがあるため一般的には行われませんが、室内管理など加温の環境下であれば行うこともできます。以下、秋挿し・冬挿しのメリット・デメリットや、方法について解説します。

大前提

大前提として、いちじくの穂木(当年枝の剪定枝)の耐寒性は不十分といえず、容易に凍結・枯れてしまいます。また、仮にうまく発芽・発根したとしても、同じく耐寒性が十分に備わっていないため、枝と同様に容易に凍結・枯れてしまいます。そのため、屋外での秋挿し・冬挿しは冬でも温暖な地域以外では現実的ではありません。

また、初めての挿し木の場合はセオリー通りにに行い、さらにステップアップしたい場合に秋挿し・冬挿しを実践する流れのほうが失敗するリスクが減らせます。

メリット

秋挿しのメリットは、根を大きく成長させられる。これにつきます。成功率の差は明確にはわからないのですが、秋挿しすると春挿しよりも発芽・展葉のスタートダッシュが早いぶん、来年の1年生苗の成長が見込めます。

根は梅雨前後と秋の2つの時期に大きく成長しますが、特に梅雨前後の根の成長は栄養成長とともに行われるため立派な木に育てるためには重要です。梅雨時期にぐんぐん枝が成長しますが、根が一気に成長するためです。そのため、挿し木苗が梅雨時期に大きく成長するために逆算すると、秋や冬に挿し木をするのが利用です。対して、春に挿し木をした場合、梅雨のタイミングでは十分に根が成長しておらず、そのまま根が成長しない暑い季節に突入してしまい、苗を大きく育てるには不利な環境になります。

また、挿し木苗はどこかのタイミングで鉢増しが必要になりますが、

  1. 根の成長期の前(梅雨前)に植え替えしようとすると根が回ってなく、植え替え時にダメにする可能性がある(根鉢になってないため土が崩れ、根いっしょに取れてしまう)
  2. また、物理的に根にダメージを与えなくても、根が十分に回ってない状態で大きな鉢に植え替えると、加湿・根腐れの危険も出てくる。
  3. だからといって、梅雨に突入してから植え替えしようとしても、根が活発に成長しているタイミングなのでいじられてダメになる可能性が。
  4. ダメになるのが怖いからと鉢増ししないと、鉢増しタイミングを逃し、根が育つ範囲が狭いままで大きな苗に育てることができず、
  5. じゃあ最初から大きな鉢に挿すぞ!とかすると、なかなか土が乾かずに根腐れを起こすと言う・・・

というように、鉢増しタイミングも不利な環境となります。イチジクに限らず植物は成長期にイジるとダメになっちゃいますが、よくイチジクを鉢増ししたら枯れた!というのはそれも原因です。(他には大きすぎる鉢に植え替えて加湿気味になって腐ってしまうなど・・・)

そういうわけで、挿し木苗は梅雨前くらいからの根と葉がぐんぐん成長する時期のまえに鉢増ししておくのが理想ですが、秋挿しや冬挿し(遅くとも1月中)だとGW前には十分に根が回ってるので植え替えしても安心です。

デメリット

根やそれに伴う苗自体の成長という観点では秋挿しや冬挿しが理想になりますが、屋外の管理は実質的に不可能なこと、また屋内での秋挿しは管理が面倒(場所を取る、換気が悪い室内でカビる)というデメリットもあるので、それらを念頭に実践してください。

また、剪定タイミングに記載していますが、落葉前あるいは落葉直後に剪定をし、その剪定枝を穂木にして挿し木をすると、穂木の中に貯蔵栄養がやや残ってしまい、発根だけでなく発芽も促されてしまいます。そのため管理によっては発根よりも発芽が先行してしまい、根がないため十分に給水できずに枯れるリスクが高まります。